「アルテミス計画」は、アメリカのNASAを中心に、人類を再び月へ、そしていつか火星へ送り出そうとする壮大な国際プロジェクトです。この記事では、アルテミス計画とは何か、なぜ今また月を目指すのか、そして「アルテミスⅠ・Ⅱ・Ⅲ」という各ミッションの役割や、日本がどう関わっているのかまで、専門知識がなくても分かるようにやさしく解説します。
人類は、半世紀ぶりに月を目指している

人類が最後に月面に立ったのは、1972年のアポロ17号でした。それ以来、人が月の大地を踏むことは長くありませんでした。しかし今、人類は再び月を目指しています。その中心となるのが、NASAが主導する「アルテミス計画」です。
「アルテミス」とは、ギリシャ神話に登場する月の女神の名前。かつて人類初の月面着陸を成し遂げた「アポロ計画」のアポロは、太陽の神であり、アルテミスの双子の兄妹とされています。半世紀の時を経て、兄妹の名を受け継ぐ計画で人類が再び月へ向かう……そこには、単なる再訪にとどまらない、新しい目標が込められています。
アルテミス計画とは? アポロ計画との違い

アルテミス計画は、アメリカのNASAが主導し、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)や欧州、カナダなど、多くの国々が協力して進める国際的な月探査計画です。目指しているのは、単に月へ人を送ることではありません。月に「持続的に」人が活動できる拠点を築き、その先の火星有人探査へとつなげていく……それがアルテミス計画の大きな目標です。
「行って帰る」から「留まって活動する」へ
かつてのアポロ計画は、月に到達して帰還することが最大の目的でした。一方アルテミス計画は、月を「一度きりの目的地」ではなく、「継続的に人が訪れ、活動する場所」にしようとしています。月面基地や、月を回る宇宙ステーションを整備し、人類が月で暮らし、働くための足場を築こうというのです。月は、その先にある火星への「中継地点」としても重要な役割を担います。

目指すのは月の「南極」
アルテミス計画が着陸目標としているのは、月の南極付近です。この地域には、太陽の光がほとんど当たらないクレーターの底などに、氷(水)が存在する可能性が高いと考えられています。もし月で水が確保できれば、飲み水や酸素、さらにはロケットの燃料の材料にもなり得ます。月で活動を続けるうえで、水はとても貴重な資源。だからこそ、水がありそうな南極が注目されているのです。
アルテミス「Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」それぞれの役割
アルテミス計画は、一足飛びに月面着陸を目指すのではなく、段階を踏んで慎重に進められています。主要な3つのミッションの役割を見ていきましょう。


アルテミスⅠ:無人での試験飛行
最初のミッション「アルテミスⅠ」は、2022年に実施された無人の試験飛行です。新型の大型ロケット「SLS」と、人を乗せるための宇宙船「オリオン」を使い、人を乗せずに月を周回して地球へ帰還しました。いきなり人を乗せるのではなく、まず機体が計画どおり安全に飛べるかを、無人で確かめる大切な一歩でした。

アルテミスⅡ:有人で月を周回
続く「アルテミスⅡ」は、宇宙飛行士が搭乗する有人ミッションです。オリオン宇宙船に乗り込んだクルーが、月には着陸せず、月を周回して地球へ帰還する計画です。人を乗せて月の近くまで往復し、宇宙船が有人飛行に耐えられることを実証する……月面着陸へ向けた、重要な有人試験の段階にあたります。

アルテミスⅢ:いよいよ有人月面着陸へ
そして「アルテミスⅢ」で、いよいよ人類は半世紀ぶりに月面へ降り立つことを目指します。宇宙飛行士が月の南極付近に着陸し、月面での活動を行う計画です。アポロ計画以来となる有人月面着陸の実現は、アルテミス計画のひとつの大きな山場といえるでしょう。なお、こうした最先端の計画では、技術的な準備や安全確認のために、実施時期が調整されることも少なくありません。

月を回る宇宙拠点「ゲートウェイ」と、日本の役割
アルテミス計画では、月を周回する軌道上に「ゲートウェイ」と呼ばれる有人の宇宙ステーションを建設する構想が進められています。地球の周りを回る国際宇宙ステーション(ISS)の、月版とイメージすると分かりやすいでしょう。ゲートウェイは、月面へ向かう際の中継基地や、さまざまな実験・観測の拠点として活用されることが期待されています。
この国際計画には、日本のJAXAも重要なパートナーとして参加しています。日本はゲートウェイへの装備の提供や、物資を運ぶ補給、月面探査に使う有人の与圧ローバ(人が乗り込める月面車)の開発など、さまざまな形で貢献することになっています。そして、こうした協力の枠組みのなかで、将来的に日本人宇宙飛行士が月面に立つことも見込まれています。日本にとっても、アルテミス計画は宇宙開発の未来を左右する大きな挑戦なのです。

よくある質問
Q. アルテミス計画とアポロ計画は何が違うのですか?
アポロ計画は「月に到達して帰還する」ことが主な目的でした。アルテミス計画は、月に持続的に人が活動できる拠点を築き、その先の火星探査までを見すえている点が大きく異なります。また、アポロが主にアメリカ単独の計画だったのに対し、アルテミスは日本を含む多くの国が協力する国際計画である点も特徴です。
Q. なぜ月の南極を目指すのですか?
月の南極付近には、日の当たらないクレーターの底などに氷(水)が存在する可能性が高いと考えられているためです。水は飲み水や酸素、ロケット燃料の材料にもなり得る貴重な資源で、月で長く活動するうえで欠かせません。だからこそ、水がありそうな南極が着陸目標に選ばれています。
Q. 日本人は月に行けるのですか?
アルテミス計画の国際協力の枠組みのなかで、将来的に日本人宇宙飛行士が月面に立つことが見込まれています。日本はゲートウェイや有人ローバの開発などで計画に貢献しており、その貢献に応じて、日本人の月面着陸の機会が期待されています。実現すれば、日本人初の月面着陸という歴史的な出来事になります。
まとめ:アルテミス計画は、人類の新しい「月の時代」の幕開け

アルテミス計画は、NASAを中心に日本など多くの国が協力し、人類を再び月へ、そしていつか火星へと送り出そうとする国際的な挑戦です。「行って帰る」だけだったアポロの時代から、「月に留まって活動する」時代へ。無人のアルテミスⅠ、有人で月を周回するアルテミスⅡ、そして有人月面着陸を目指すアルテミスⅢと、段階を踏んで着実に前進しています。
月を回るゲートウェイの建設や、日本人宇宙飛行士の月面着陸など、これから続くニュースにもぜひ注目してみてください。私たちは今、人類が月に暮らし始める「新しい月の時代」の入り口に立っているのかもしれません。

