恐竜が生きていた白亜紀後期(約7000万年前)の1日は、いまより約30分短い、約23.5時間だったと推定されています。オマーンで見つかった二枚貝の化石に残る、毎日の成長の線から分かったことです。この記事では、昔の1日の長さをどうやって調べるのか、なぜ1日は少しずつ長くなるのか、そしてこの数字をどこまで信じてよいのかを、順に解説します。
恐竜が見ていた「1日」は、いまと同じ長さだった?

朝が来て、昼になり、夜が来る。私たちにとって、1日は24時間で、あたりまえのものです。では、恐竜が暮らしていた時代の1日も、同じ24時間だったのでしょうか。
恐竜が地球にあらわれたのは、約2億3000万年前の三畳紀後期といわれています。ティラノサウルスやトリケラトプスなど、鳥類以外の恐竜が絶滅したのは、約6600万年前とされています1。恐竜の時代は約1億6000万年以上も続いたことになります。
結論を先に言うと、昔の1日は、いまより短かったと考えられています。地球の自転は、長い時間をかけて、少しずつ遅くなっているからです。ただし、恐竜の時代全体を通した1日の長さが分かっているわけではありません。この記事では、数字が調べられている白亜紀後期の1例を中心に紹介します。
昔の1日の長さは、どうやって分かるの?

数千万年前の自転の速さを、直接測ることはできません。そこで手がかりになるのが、貝やサンゴの化石です。貝やサンゴは、昼と夜、そして季節のめぐりにあわせて、殻や骨格をつくります。その成長の跡が、木の年輪のように、化石に細い線として残ります。

この考え方で、昔の1年の日数を調べたのが、研究者のウェルズ氏。1963年に、約3.5億年前のサンゴの化石にある日ごとの成長輪を数えて、1年に約400日あったことを示しました2。その後、貝などを使った研究でも、1年の日数が時代とともに減ってきたことが分かったと、名古屋市科学館の展示では紹介されています3。
1年は地球が太陽のまわりを1周する時間です。この長さは、約7000万年前もいまとほぼ同じだったと考えられています4。それなのに1年の日数が多かったということは、1日が短かった、ということになります。
白亜紀後期の貝が教える「1日約23.5時間」

2020年、ブリュッセル自由大学などの研究チームが、白亜紀後期の貝の化石から、1日の長さを調べた結果を発表しました。調べたのは、いまのオマーンの山地で見つかった、トレイテス・サンチェジ(Torreites sanchezi)という二枚貝の化石です5。この貝は、約7000万年前の浅い熱帯の海底で、礁(しょう)をつくって暮らしていました。9年以上生きた個体で、約6600万年前に絶滅したとされています6。
調べ方は、とても細かいものです。研究チームは、貝殻のうすい切片に、レーザーで直径約10マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)の小さな穴をあけて、成分を測りました。その成分の変化から、日ごとの成長輪を数え、季節の変化から年の区切りを決めています7。
その結果、約7000万年前の地球は、1年に約372回自転していて、1日は約23.5時間だったと推定されました89。

計算で確かめてみましょう。372日に約23.5時間をかけると、約8,740時間です。いまの1年(365日×24時間=8,760時間)と、ほとんど同じ長さになります。1年の長さはほとんど変わらず、1日が短かったぶん、1年の日数が多かった、と読み取れます。
なぜ1日は、少しずつ長くなるの?

理由は、月の引力がもたらす潮汐摩擦(ちょうせきまさつ)です。月の引力で、地球の海水は月の方向にふくらみます。地球は自転しているため、このふくらみは、月の真下より少し先へずれます。国立天文台は、このずれた引力が自転と逆向きに働くため、長い目で見ると自転が遅くなり、1日が延びると説明しています10。

1日が延びる速さは、100年で約2ミリ秒です(1ミリ秒は1000分の1秒)11。私たちの暮らしでは気づけない量ですが、何千万年という時間が積み重なると、約30分もの差になります。
自転が遅くなる反動で、月は地球から少しずつ遠ざかっています。月レーザー測距という方法で測ると、その速さは1年に約3.8cmです12。
ただし、いまの速さをそのまま過去にさかのぼることはできません。いまのペースで逆算すると、約14億年前には月が地球の中にめり込んでしまうため、昔は速さがちがっていたはずだと、研究チームは説明しています13。
この数字は、どこまで信じていい?


ここまでの話は、とても面白い一方で注意して読む必要があります。1つ目は、約23.5時間という値が、1個体の貝殻の分析から出た結果だということです。ブリュッセル自由大学の発表でも、分析は貝殻1つに基づくものと書かれています14。
2つ目は、この貝には、いまの時代に近い仲間がいないことです。そのため、同じ方法をほかの生物にそのまま使えるとは限りません。研究チームは、ほかの時代の貝でも同じ調査を重ねる予定だと、ブリュッセル自由大学は伝えています15。
3つ目は、これが白亜紀後期の1例にすぎないことです。恐竜の時代は1億年以上もあり、三畳紀やジュラ紀の1日の長さは、この記事では確認できていません。「恐竜の時代の1日は23.5時間」ではなく、「恐竜の時代の終わりごろには、約23.5時間だったと推定されている」というのが、正確な言い方です。
同じ貝殻の成分からは、水温も推定されています。当時のオマーンの浅い海は、夏はおよそ40℃、冬も30℃を超えていたとされます16。小さな貝殻の中に、恐竜の時代の1日と、季節のようすが閉じ込められているのです。
よくある質問
Q. 恐竜は、いまより夜が短くて困らなかった?
1日が約30分短かったとしても、昼と夜の長さの割合は、季節や場所によって数時間も変わります。日本でも、昼の長さは夏と冬で4時間以上ちがいます。30分の差は、そうした変化にくらべると小さく、恐竜の暮らしにどれほど影響したかは、この調査からは分かりません。
Q. いまも、1日は長くなっているの?
はい。国立天文台によると、100年で約2ミリ秒のペースで、1日は延びています17。私たちの生活で気づく量ではありません。
Q. 1年の長さは、昔と変わったの?
地球が太陽を1周する時間は、約7000万年前もいまと同じだったとされています18。1年の長さは同じで、1日が短かったぶん、1年の日数が多かった、というちがいです。
まとめ:白亜紀後期の1日は、約23.5時間だったと推定されている


白亜紀後期(約7000万年前)の1日は約23.5時間で、1年は約372日でした。月の引力による潮汐摩擦で、地球の自転は少しずつ遅くなり、1日は長くなっています。いまも100年で約2ミリ秒、延びています。
ただし、この数字は1個体の貝化石から出た推定で、恐竜の時代のほかの時期は、まだ確かめられていません。夜空に浮かぶ月が、1日の長さにまで関わっている。そう思って見上げると、いつもの月が少し違って見えてくるかもしれません。
参考:
- アメリカ自然史博物館(AMNH)「150 Million Years of Dinosaur Evolution」 ↩︎
- 名古屋市科学館 展示解説(サンゴの成長輪と1年の日数) ↩︎
- 名古屋市科学館 展示解説(サンゴの成長輪と1年の日数) ↩︎
- ブリュッセル自由大学(VUB)「Days were shorter in the past」 ↩︎
- 米国地球物理学連合(AGU)「Ancient shell shows days were half-hour shorter 70 million years ago」 ↩︎
- 米国地球物理学連合(AGU)「Ancient shell shows days were half-hour shorter 70 million years ago」 ↩︎
- 米国地球物理学連合(AGU)「Ancient shell shows days were half-hour shorter 70 million years ago」 ↩︎
- 米国地球物理学連合(AGU)「Ancient shell shows days were half-hour shorter 70 million years ago」 ↩︎
- ブリュッセル自由大学(VUB)「Days were shorter in the past」 ↩︎
- 国立天文台 暦計算室「潮汐摩擦」 ↩︎
- 国立天文台 暦計算室「潮汐摩擦」 ↩︎
- 国立天文台 暦計算室「潮汐摩擦」 ↩︎
- 米国地球物理学連合(AGU)「Ancient shell shows days were half-hour shorter 70 million years ago」 ↩︎
- ブリュッセル自由大学(VUB)「Days were shorter in the past」 ↩︎
- ブリュッセル自由大学(VUB)「Days were shorter in the past」 ↩︎
- 米国地球物理学連合(AGU)「Ancient shell shows days were half-hour shorter 70 million years ago」 ↩︎
- 国立天文台 暦計算室「潮汐摩擦」 ↩︎
- ブリュッセル自由大学(VUB)「Days were shorter in the past」 ↩︎











