空にかがやく太陽の光は、じつは「いま」の光ではありません。太陽から地球まで、光はおよそ8分19秒かけて進みます。この記事では、その時間の求め方と、月や木星との比べ方、そして太陽の中で光のもとが生まれてから外へ出てくるまでの長い旅を、やさしく紹介します。
今見ている太陽は、「8分前」の姿

晴れた日の空にかがやく太陽。その姿を、毎日あたりまえのように見ています。ところが、いま目に映っている太陽は、「いまこの瞬間」の太陽ではありません。目に届いた光は、約8分19秒前に太陽の表面を出発したもの。つまり私たちが見ているのは、およそ8分前の太陽の姿なのです。
光はとても速いのに、なぜ8分もかかるのでしょうか。理由は、太陽と地球のあいだが、それほど遠く離れているからです。たとえば朝、太陽が地平線から顔を出して見えた瞬間、その光は、約8分19秒前に太陽の表面を出発したものです。次の見出しで、この数字を実際に計算してみましょう。

8分19秒は、「距離÷速さ」で計算できる

計算に使うのは、2つの数字。1つ目は天文単位と呼ばれる、地球と太陽の距離の目安。国立天文台の暦計算室では、1天文単位は149,597,870.7km(定義値)とされています。およそ1億4960万kmです。
2つ目は、光の速さ。秒速およそ30万kmで、1秒間に地球を約7周半もできる速さといわれます。距離を速さで割れば、かかる時間が出ます。149,597,870.7を299,792.458で割ると、およそ499秒。分にすると、8分19秒になります。
念のため、逆向きにも確かめてみましょう。秒速30万kmで499秒進むと、30万×499=約1億4970万km。たしかに、太陽までの距離とほぼ重なります。

光の速さがどれほど桁違いかは、身近な乗り物と比べると実感できます。もし時速900kmで飛ぶ旅客機で太陽へ向かえたとしたら、約19年かかる計算です。時速300kmで走り続ける新幹線なら、約57年。どちらも、距離を速さで割っただけの目安の計算ですが、光が約8分19秒で進む距離の大きさが伝わります。
この8分19秒は、距離と光の速さから計算して求めた値です。地球と太陽の距離はいつも同じではないため、じつは時期によって少しだけ変わります。くわしくは、記事の後半のよくある質問で紹介します。
ほかの天体の光は、何秒・何分かかる?

同じ計算を、ほかの天体にもあてはめてみましょう。まず月。国立天文台によると、月は地球からおよそ38万4400kmの距離にあります。光なら約1.3秒。月を見上げたときの光は、約1.3秒前の月から届いたものです。
つぎに木星。国立天文台が公表している軌道の値では、木星と太陽の距離(軌道長半径)は約5.2天文単位です。太陽から地球までが約8分19秒なので、太陽の光が木星に届くまでは、約43分かかる計算になります。なお、地球から見た木星までの距離は、位置関係によって変わります。

太陽の次に近い恒星でも、光が届くまでには年単位の時間がかかります。そのため、太陽より遠い星の距離は、光が1年かけて進む距離である「光年」で表します。
太陽の光が生まれたのは、「いつ」?

ここまでは、太陽の表面を出発した光の話でした。では、その光のもとになるエネルギーは、どこで生まれたのでしょうか。太陽の中心部では、密度も温度もとても高くなり、核融合(軽い原子が合体して、大きなエネルギーを生む反応)が起きています。ここで生まれたエネルギーが、太陽の表面まで運ばれ、光となって宇宙へ出ていきます。
太陽の中心でできるのは、光だけではありません。核融合にともなって、ニュートリノという粒子も生まれ、太陽の中心核で発生したニュートリノが地上で検出されています。太陽が中心で核融合によって輝いていることは、こうした観測からも裏づけられています。
ただし、中心から表面までの道のりは、まっすぐには進めません。かかる年数は、数万年から100万年ほどと、説明によって幅があります。私たちが見ている光は、8分19秒前に表面を出発しましたが、そのもとになったエネルギーは、はるか昔に生まれたものだと考えられています。
正確な年数は説明によって異なるため、ここでは「とても長い時間」と覚えておくとよいでしょう。太陽の光には、表面から地球までの8分19秒と、中心から表面までの長い時間、2つの旅があるのです。
よくある質問
Q. 太陽を見たとき、目に届く光は何分前のもの?
約8分19秒前のものです。ただし、地球と太陽の距離は年間を通して少しずつ変わります。国立天文台の軌道の値から計算すると、いちばん近いとき(近日点)は約8分10秒、いちばん遠いとき(遠日点)は約8分27秒です。
Q. 夜空の星の光は、どのくらい前のもの?
星によって異なります。太陽の次に近い恒星でも、光が届くまでには年単位の時間がかかります。遠い星ほど、より昔に出た光を見ていることになります。星までの距離は、光が1年に進む距離の「光年」で表します。
Q. 地球と太陽の距離は、一年中同じ?
同じではありません。地球の軌道が少しだけ楕円(だえん)になっているため、距離は年間を通して変わります。国立天文台の軌道の値から計算すると、およそ1億4700万kmから1億5200万kmの範囲で、それにあわせて光が届く時間も変わります。
まとめ:今の太陽は、約8分19秒前の姿

太陽から地球までは約1億4960万km。光の速さ(秒速約30万km)で進んでも、約8分19秒かかります。つまり空に見える太陽は、いつも約8分前の姿です。さらに、その光のもとになるエネルギーは、太陽の中心で、とても長い時間をかけて外へ出てきたといわれています。いつもの太陽を見上げるとき、そんな時間の旅を思い出してみてください。
なお、太陽を観察するときは、太陽を直接見ないようにし、専用の観察道具を使ってください。

