北極星は、夜空で北の方角を教えてくれる星です。ほとんど動かないので、「ずっと同じ星」と思われがちですが、数千年から数万年の長さで見ると、北極星は入れかわります。この記事では、その理由と、昔の北極星・未来の北極星を、やさしく紹介します。
北極星は、ほとんど動かない星

いまの北極星は、こぐま座のα星「ポラリス」です。夜空の星は、地球の自転のために、天の北極という点を中心に、ぐるりと回って見えます。ポラリスは、この天の北極のすぐ近くにあるため、ほとんど位置が変わりません。そのため、昔から方角を知る目印として使われてきました。星が回って見える動きは、一晩のうちにも、はっきり分かります。
ただし、ポラリスは天の北極にぴったり重なっているわけではありません。国立天文台の暦のページには、ポラリスも、半径40′(′は角度の単位で、約0.7度)ほどの小さな円をえがいて、天の北極のまわりを回っていると書かれています。
さらに、江戸時代の天文学者・渋川春海(しぶかわ はるみ)のころは、天の北極と北極星はおよそ2.5度はなれていたとされています。いまよりも、ずっとずれていたのです。
じつは、天の北極そのものが動いている

北極星が変わる理由は、地球の自転の軸(地軸)の向きが、ゆっくり変わっているからです。回っているコマの軸が、首をふるように円をえがくことがありますが、それと似た動きです。この動きを「歳差(さいさ)」といいます。国立天文台の暦のページでは、自転軸が約26000年の周期で回転すると説明されています。

地軸の向きが変わると、地軸をまっすぐ北へのばした先、つまり天の北極の位置も、星空の中で少しずつ動いていきます。天の北極に近い星が入れかわるので、「北極星」と呼ばれる星も入れかわるのです。
では、地軸はなぜ首をふるのでしょうか。国立天文台の暦のページによると、地球が完全な球ではなく、赤道方向にふくらんだ形をしていることと、太陽や月の引力がはたらくことが関係しています。この引力が、倒れかけた軸を起こそうとする向きの力になり、軸の首ふり運動が続きます。
歳差は、いつ見つかった?

歳差は、じつは2000年以上前から知られていました。国立天文台の暦のページによると、西洋では紀元前2世紀ごろにヒッパルコスが、中国では4世紀ごろに東晋(とうしん)の虞喜(ぐき)が発見したといわれています。
星の位置を、長い年月にわたって記録し続けていたからこそ、1年や10年では分からないゆっくりした変化に気づけたのだと考えられます。夜空は毎晩同じように見えても、数千年のスケールでは、少しずつ変わっているのです。
「天の北極」と「北極星」は、別のもの

ここで、言葉を整理しておきましょう。天の北極は、地軸をまっすぐ北へのばした先にある、星空の中の「点」です。そこには、星があるとは限りません。北極星は、その点のいちばん近くにある星のことを、ふつうは指します。

天の北極が星空の中を動いていくと、近くにある星も変わります。「北極星」という名前は、特定の星につけられた名前というより、そのときの「北の目印の星」という役目の名前なのです。
昔の北極星、未来の北極星

国立天文台によると、いまから5000年ほど前には、自転軸はりゅう座のα星「トゥバン」の方向を向いていました。このころの北極星は、トゥバンだったことになります。
未来はどうでしょうか。約1万2000年後には、こと座のベガ(織姫星)が天の北極の近くに来て、北極星の役目をになうといわれています。ベガは、夏の夜空で明るくかがやく星です。

また、ポラリスが天の北極にいちばん近づくのは2100年ごろで、そのあとは少しずつ離れていくといわれています。いまの北極星も、いつまでも北極星でいるわけではありません。
地軸が1周するのに約26000年かかるので、数年や数十年のあいだに北極星が変わることはありません。でも、人類の歴史ほどの長さで見ると、北極星ははっきり入れかわるのです。
いまの北極星と、こぐま座の見つけ方

いまの北極星・ポラリスは、こぐま座の尾の先にあたる星です。こぐま座の形や、北極星のくわしい解説は、こちらの記事も見てみてください。
よくある質問
Q. 北極星は、これからもずっと同じ星ですか?
いいえ。地軸の向きが約26000年の周期で変わるため、時代とともに入れかわります。
Q. いまの北極星は、天の北極にぴったりありますか?
ぴったりではありません。国立天文台によると、半径40′(約0.7度)ほどの小さな円をえがいて、天の北極のまわりを回っています。
Q. 北極星が変わるのは、星が動くからですか?
おもな理由は、星が動くことではなく、地球の自転の軸の向きが変わることです。軸の向きが変わると、天の北極の位置も星空の中で動きます。
まとめ:北極星は、いま天の北極に近い星のこと


北極星は、「動かない星」の名前ではなく、いま天の北極のそばにある星のことです。地球の軸が約26000年かけて首をふるため、昔はトゥバン、いまはポラリス、約1万2000年後はベガ、というように入れかわっていきます。次に北の空を見るときは、約5000年前や約1万2000年後の空を、少し想像してみてください。










