国際宇宙ステーション(ISS)は、なぜ地球に落ちてこないのでしょうか。答えは少し意外で、「落ちていない」のではなく、「落ち続けている」のです。この記事では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の解説にもとづいて、ISSが落ちてこない仕組みと、船内の人や物がふわふわ浮く本当の理由を、やさしく紹介します。
ISSは、宇宙にぴたっと止まっているわけではない

ISSは、地上から約400km上空を飛ぶ、巨大な有人実験施設です。JAXAによると、大きさは約108.5m×約72.8mでサッカーのフィールドと同じくらい、質量は約420トンです。こんなに大きく重いものが、なぜ地上に落ちてこないのでしょうか。
「宇宙には重力がないから」と思う人もいるかもしれませんが、それは違います。ISSは地表に近い軌道を飛んでいるため、そこで働く重力は、地上と比べて10%程度しか小さくなりません。ISSにも、地球の重力は、ほとんど変わらず働いているのです。
では、なぜ落ちてこないのでしょうか。JAXAは、人工衛星やISSについて、「実は、常に地球に落ち続けているのです」と説明しています。
ニュートンの「小石」で考える、落ち続ける仕組み

高い場所から、小石を水平に投げる場面を想像してみてください。ゆっくり投げれば、小石はすぐ足もとに落ちます。力いっぱい速く投げれば、もっと遠くまで飛んでから落ちます。
では、もっともっと速く投げたら、どうなるでしょうか。地球は丸いので、落ちていく先の地面も、丸みにそって遠ざかっていきます。十分に速ければ、小石は地面に届かないまま、地球のまわりをぐるりと回り続けることになります。この考えはニュートンが『プリンキピア』という本で述べたもので、人工衛星が打ち上げられる約300年前のことです。

ここでもう一つ、「慣性の法則」がかかわってきます。慣性の法則とは、外から力が加わらなければ、動いている物体は同じ速さでまっすぐ進み続ける、という決まりです。ISSはまっすぐ飛ぼうとしますが、地球の重力が、地球の中心に向かって引きつづけて、進む向きを曲げています。この力を「向心力」(円の中心に向かって引く力のこと)と呼びます。
速すぎると周回する軌道から飛び出してしまい、遅すぎると地球に落ちてしまいます。ちょうどよい速さで横に飛ぶことで、地球の丸みに沿って「落ち続ける」状態になり、ISSは地球のまわりを回り続けます。
ISSは、どれくらいの速さで飛んでいる?

ISSは秒速約7.7km、時速にすると約28,000kmで飛んでいます。地球を約90分で1周し、1日に約16周します。約90分に約16周をかけると、ほぼ24時間、つまり1日になる計算です。
秒速7.7kmは、高度400kmと比べると、その速さが実感できます。400を7.7で割ると、約52秒。真上に約400km上がるのと同じ距離を、横には1分足らずで進んでしまう速さです。

船内がふわふわ浮くのは、「重力がない」からではない

ISSの中で、宇宙飛行士が宙に浮かんでいる映像を見たことがあるでしょう。この状態は「無重力」とよく呼ばれますが、重力が消えたわけではありません。
ISSは地球に対して自由落下(重力にまかせて落ちること)の状態にあり、ISSも船内も「無重量」(物が重さを感じない状態)になっています。ISSと、その中にいる人や物は、同じ軌道を同じ速さで飛んでいます。みんないっしょに落ちているので、床に押しつけられる感じがなくなり、ふわふわ浮いてしまうのです。
JAXAは、この様子を、エレベーターのケーブルが切れて落ちていく場面や、遊園地のフリーフォールにたとえています。落ちている最中は、体が浮いたように感じますよね。ISSの船内は、それが地球のまわりで、ずっと続いている状態といえます。

宇宙飛行士は、訓練でも同じ原理を使います。JAXAによると、飛行機を重力にまかせて放物線を描くように飛ばして、約25秒の「無重力」をつくり出しています。
ちなみに、「無重力」は重力がない、または極めて弱い空間をさす言葉で、「無重量」は物に重さがない状態をさします。重力があっても、自由落下している空間では、無重力と同じ状態になります。この点に最初に気づいたのは、1907年のアインシュタインだと記されています。
それでも、ISSの高度は少しずつ下がる


JAXAによると、ISSの運用高度は約400kmで、330〜460kmの間で運用できる円軌道とされています。高度約400kmでも、ごくうすい上層大気は残っています。JAXAの解説では、ISSは上層大気の空気抵抗によって、徐々に高度が下がっていきます。
そのため、ISSでは、エンジンを噴射して、定期的に高度を上げています。「落ち続けている」ISSが、地球のまわりを回り続けられるのは、速さと高さを、こうして保っているからでもあるのです。
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よくある質問
Q. ISSは、宇宙に止まっているのですか?
いいえ。JAXAによると、ISSは秒速約7.7km(時速約28,000km)で飛んでいて、地球を約90分で1周しています。
Q. ISSの高さでは、重力はなくなっているのですか?
いいえ。ISSは地表に近い軌道を飛んでいるため、重力は10%程度しか小さくなりません。船内で浮くのは、重力がないからではなく、自由落下しているからです。
Q. ISSの速さが足りないと、どうなりますか?
遅すぎると地球に落ちてしまいます。ISSは上層大気の空気抵抗で少しずつ高度が下がるため、エンジンを噴射して、定期的に高度を上げています。
Q. 「無重力」と「無重量」は、何が違うのですか?
JAXAによると、「無重力」は重力がない、または極めて弱い空間をさし、「無重量」は物に重さがない状態をさします。ISSとその内部は、地球に対して自由落下しているため、無重量です。
Q. ISSは、1日に何周するのですか?
1日に約16周します。地球を1周するのに、約90分かかります。
まとめ:ISSは、落ちてこないのではなく、地球のまわりを「落ち続けて」いる


ISSが落ちてこないのは、重力がないからではありません。横に秒速約7.7kmという速さで飛びながら、地球の丸みに沿って、落ち続けているからです。船内の人や物がふわふわ浮くのも、みんなISSといっしょに落ちているから。重力は、ちゃんと働いているのです。










